2009年01月02日
アルバム・オブ・ザ・イヤー一等賞

Duels - The Barbarians Move In
これはどう聴いても今流行るタイプの音ではない。ディスコ・パンクやニュー・レイヴといった所謂「踊れる」ロックでは勿論ないし、ガレージ叩き上げのラフ&レアなバンド・サウンドが展開している訳でもない。むしろ、泡沫夢幻の様相を呈するUKシーンにあっては煙たがれる類いのシリアスさを伴った、マーケティング方面に関しては完全に無頓着に作られたと思しき音楽作品である。しかしこの、一遍の小説をアルバム一枚使って体現させんとするかのような濃密な作家性と、同時に凡そあらゆる人間の感情に対応すべくオールレンジに展開するドラマティックなサウンドは、明らかに長きに亙るブリティッシュ・ロックの歴史の上に立った優良遺伝子によるものだ。06年の新人レースには見事に乗り遅れた彼等だが、この素晴しいセカンド・アルバムによって、同世代の連中とは目指すレベルが違うということを確実に知らしめてくれたといえる。
アルバム・オブ・ザ・イヤー二等賞

Joe Jackson - Rain
とかく我が国の音楽ファンは往年のヒット・メーカーに対して冷たいもので、80年代に名曲シングル「ステッピン・アウト(夜の街へ)」を収めた『ナイト・アンド・デイ』を米ビルボードで大ヒットさせたこの人の新譜も、国内発売は見送られたようだ。王立音楽アカデミーに在籍したこともあるほど音楽的造詣の深い彼がどのような決意をもってロック界に身を投じたのかは僕の想像の及ぶところではないが、少なくともこれまでリリースされて来た彼の作品はどれも聴き手の期待を裏切らない内容のものばかりだった。最新作となる本盤も、鍵盤/ベース/ドラムスというギターレスの布陣によるシンプルなアレンジの楽曲群ながら、その味わい深さは折り紙つき。変にベテラン風を吹かすことなく都会の息吹を素直に反映させた瑞々しい音といい、未だもって若々しいジョーの歌声といい、優れたポップスが持つエヴァーグリーンな魅力を存分に湛えた全10曲が聴かれる。何より精神的に辛かった筈の『ブレイズ・オブ・グローリー』や『ラーフター・アンド・ラスト』の頃を髣髴させる外向性が頼もしいじゃないか。文句無しに傑作だ。
アルバム・オブ・ザ・イヤー三等賞

Supergrass - Diamond Hoo Ha
ブリット・ポップの徒花どころか、遍くブリティッシュ・ポップの将来を担うまでのバンドに成長した彼等。既にオッサンと呼ばれる年齢に達したとはいえ、音楽に対するピュアな愛情は些かの衰えも見せてはいない。ルーツの脆弱さを逆手に取って、遠慮無しに旺盛な好奇心を各ジャンルに跨がせることが出来るというUK勢の特権がフルに生かされたこれは、会心の一枚といえるだろう。鍵盤弾きのギャズの兄貴が本格的に関わるようになった4枚目辺りから顕著な音楽的引き出しの多さより、そこを踏み台にしてのバンドの体力が強烈にアピールされるアッパーな楽曲群が心底頼もしい。オアシスがビートルズを引き合いに出して語られつつ独自な成長を遂げたのとは別なベクトルで、キンクス=デイヴィス兄弟の嫡子としての彼等をもっと評価してもらいたいと思う。20年、30年と続けていって欲しいバンドに彼等はなった。
ウェルカムバック賞

They Might Be Giants - The Else
帰って来た知性派トイ・ポップ・デュオ。ブルックリンの猥雑な空気に育てられたタフな進取精神はデビューから25年経ってもまったく衰えず。過去にグラミー賞を獲ったとて決して高飛車にならぬヤンチャ・マニアぶりが嬉しい一枚。

Mark Morriss - Memory Muscle
彼をカムバックの括りに入れると怒られそうだ。でもこれは好作。バンドマンから離れたSSW指向と素直なルーツ愛とが嫌味なく楽曲に溶け込んだ。この調子で本業のブルートーンズの方も頑張って下さい。
まとめ
トルバドールズはちょっとエッグストーンみたいだし、フレンドリー・ファイアーズはアンダーワールドだし、ザ・スクリプトはラジオフレンドリー過ぎるし、おっいいな、と思っても諸手を挙げて喜べる新人に中々巡り会えなかった2008年、僕達の耳を楽しませてくれたのはやっぱり年季の入ったベテランや中堅組だった。そんな中、06年デビュー組とはいえ若手とは思えないほど堂の入った新譜で家人共々驚かされたデュエルズに軍配が上がった。今のところ国内盤は出ていないようだが、既にV2からリリース済みのファースト・アルバム『ザ・ブライト・ライツ・アンド・ホワット・アイ・シュッド・ハヴ・ラーンド』と併せて是非多くの人に聴いて欲しいバンドだ。さて、今年はフランツ・フェルディナンド辺りからスタートだね。