2009年04月12日
Spoon - Ga Ga Ga Ga Ga (2007)

2007年/国内盤/発売:FAEC 販売:バウンティ(解説:田中宗一郎)
各方面で07年度のベスト・アルバムとの呼び声が高かった、米国テキサス州はオースティン出身の5人組による6thアルバム。個人的に彼等を知ったのは実はかなり遅めで、家人がウェブ上で見つけて来た前作収録の“I Turn My Camera On”、この曲に合わせてロボットのKeeponが身悶えするほど愛らしいダンスを披露するという萌え動画との出会いが最初だった。ちなみに彼等とKeeponとのコラボは今作収録のM4のPVでも拝むことが可能なので、機会があれば是非検索してみて欲しい。さて、件の前作の成功を受け、ブレイク前夜といった状況下で制作された本作は、僕の様なスプーン初心者にもすんなり入っていける間口の広さと、それでも毅然と保持されたインディー精神がどこまでも頼もしい、見事な傑作に仕上った。往年のソウルやR&Bを髣髴させるふくよかなメロディ・ラインやアレンジメントによる人肌感を有しながら、それでいてロックンロールとしてのダイナミズムは些かも損なわれていないのが素晴しい。ああ、これでまた旧譜を遡る楽しみに浴せる。Keeponにも多謝だ。
T.V. Smith - March Of The Giants (1992)

1992年/国内盤/日本コロムビア(解説:駒形四郎)
元ジ・アドヴァーツのフロントマン、といっても一定の年齢以上の人でないとピンと来ないと思われるT.V.スミス、ソロ名義としては2枚目となるアルバム。かくいう僕もこの人の前歴なぞ一切知らぬまま本作に手を出した一人なので、キャリアを絡めた上での論評は当然不可能。ただ、そのおかげでいらぬ色眼鏡をかけずに各楽曲に臨めた点はある意味ラッキーだったかも知れない。何故なら、とある英国ロンドン郊外出身のSSWによるちょっと過激なアコースティック・ポップとして、これは非常に優秀な作品だから。個人的には一聴してイエスのジョン・アンダーソンを想起してしまった微妙なハスキー・ボイスが導く全13曲は、時に大仰なまでの荘厳さを伴って、時にパンクスらしい瞬発力を生かした疾走感でもって、至極シンプルな構成とは思えないほど鮮やかな彩りを見せてくれる。そして終始一貫してシリアスな調子で紡がれるのは、スミス自身による寓話性を織り交ぜたシニカルなメッセージ群。サウンドの過激さよりスピリチャルな部分を重んじた老獪なパンクスによる快作として、大成功の一枚といえよう。
2009年04月05日
Kevin Ayers - Falling Up (1988)

1988年/国内盤/ヴァージン・ジャパン(解説:赤岩和美)
80年の『ザッツ・ホワット・ユー・ゲット・ベイブ』の不振以来しばらく低迷期の続いた彼が、久々にメジャー・レーベルからリリースした12枚目のアルバム(あの面白ライヴ盤は除く)。そのせいもあってか、当時のメディアはロック界の影の大御所による復活作として印象付けたかった模様。ただ当の本人はそんな風評何処吹く風、と言わんばかりのマイペースぶりをここでも発揮して、ジャケットに写る姿そのままの飄逸なポップ・ロックを披露している。ポップ・ロック、と書くと僕よりずっと熱心なファンの人達から叱られそうだけど、確かに僕の耳には彼の歌はそうとしか形容の仕様の無い柔和なものとして響いた。変に重鎮を気取るでなく、いかにもさり気無い調子で演奏される全8曲は、彼特有のちょっと浮世離れしたセンスを存分に湛えつつ非常にリラックスしたムードで進行する。その様が、音楽を奏でる事の愉悦を彼自身が改めて満喫しているように思えて、ああ、本来こういうのを指してこそAORと言うのだろうな、と素直に感じ入った次第。往年の吟遊詩人が正しい歳のとり方を教えてくれる、充実の一枚だ。
Peacock Palace - Gift (1996)

1996年/国内盤/パルコ(解説:伊藤なつみ)
女性のメイン・ヴォーカルを擁するドイツ出身の5人組による、オリジナル・アルバムとしては3作目にあたる本邦デビュー盤。ボーナス・トラックを含め全13曲中5曲にポーグスのメンバーが参加しているという話題性から、僕は勝手にトラッド系に特化したグループと思い込んでいたのだけど、やはり先入観は禁物だ。実際に聴いてみるというと、確かにアコースティックな響きを重視したフォーク・ロック的な演奏が主体となってはいるものの、ヴォーカルのペトラ嬢がクラブ・サウンドからの影響にも言及している通り、容易にレイドバックに安住すまいという彼等の進取の精神が楽曲の端々に感じられる。冒頭を飾るに相応しいポジティヴなポップ・ソングのM1や、UK勢と見紛わんばかりのダンサブルなギター・ロックを展開するM6、メロウなサイケ・ポップといった風情のM7等は出色の出来だろう。ただ惜しむらくは、個人的な話で恐縮だがペトラ嬢の歌声、これが微妙に姉御肌な声色なのが気になってしまった。どうも僕はこの手の女性ヴォーカリストが苦手なので、ここだけ減点対象。でも、総じて好盤といえる。
Elliott Murphy & Iain Matthews - La Terre Commune (2000)

2000年/国内盤/発売元:MSI(解説:山本智志)
ロック界では一体どういった経緯で実現したのか俄かには想像し難いコラボレーションというのが稀にあるけれど、これもその内の一枚に数えられるだろう。アメリカ出身、精力的なライヴ活動で70年代初頭のNYアート・ロック・シーンを牽引したエリオット・マーフィーと、イギリス出身、あの偉大なるフェアポート・コンヴェンションをリチャード・トンプソン等と共に結成したイアン・マシューズ。国籍は違えど共にロック史にプレシャスな足跡を残した生き証人ともいえる両者による驚きの共演作は、果たせるかな、「共通の土台・合意点」を意味するアルバム・タイトルに象徴的な、互いの長所が絶妙にブレンドされた極上のソング・ブックに仕上った。各々のオリジナルを4曲ずつ、ボブ・ディランやブルース・スプリングスティーン、ジェシ・コリン・ヤング等のカヴァーを5曲と、バランス良く配分された楽曲構成もさることながら、まるであらかじめデュオ形態であったかの如き自然なアルバムの流れに心底驚かされる。ほぼ初対面に近い大御所同士によるコラボ作としては、これは結構上位に来る一枚なのではないか。傑作だ。
2009年03月29日
The Bottle Rockets - 24 Hours A Day (1997)

1997年/国内盤/発売:イーストウェスト・ジャパン 販売:ワーナーミュージック・ジャパン(解説:無記名)
“打ち上げ花火”なる威勢の良いバンド名に、帯のコピーにある「パブ・ロック」というキーワード、そして何より、郊外にポツンと佇む一件のバーらしき萎びた建物が写るアルバム・ジャケットに惹かれて、思わず手に取った一枚。これが大当たりだった。アメリカ南部ミズーリ州はフェスタス出身の4人組によるサード・アルバム(国内盤としては2枚目)は、それこそCCRやZZトップ等と並べておきたくなるような、酒と土煙にまみれた痛快極まりないアメリカン・ルーツ・ロック集。こういうのはウチに何枚あっても困らない。寡聞にして僕は知らなかったのだけど、彼等はかのアンクル・テュペロと親交があったらしく、そのせいかオルタナ・カントリーの括りにあるグループとの認識が一般的なようだ。ただ、同じくパンクの洗礼を受けた世代とはいえ、こちらはオリジナルに対する執着心はかなり希薄で、むしろオラが国のルーツ・ミュージックの豊饒さにおんぶにだっこ状態であることを心底楽しんでいる印象を受ける。日常と地続きな場所に音楽がある、その幸福を当たり前のものとして享受した贅沢な作品だ。
Hothouse Flowers - Songs From The Rain (1993)

1993年/国内盤/ポリドール(解説:花房浩一)
どんなに背伸びしたってボノの様なポップ・スターを気取れる器ではないし、この先トレーニングを重ねたところでヴァン・モリソンみたくソウルフルに歌えっこない。だったら元来バックボーンとしてあったアイリッシュ・トラッドに立ち返ろうと思っても、既に「よそ者」たるマイク・スコットに決定版アルバムを出されちゃった後だし、今更感ありありだ。そんな感じでようやく諦めがついたのか、ここでのリアムの歌声はとてもしっとりと落ち着いている。純粋無垢な音楽愛を「売り物」にするというジレンマによる締め付けが相当きつかったのはデビュー当初から想像はついていたものの、後年になってこうまで彼等のポジションの困難さを露見させる事態を招くことになろうとは予想以上。そんな折届けられた3枚目、名手スチュワート・レヴィンをプロデューサーに迎えた本作は、時折ディナー・ショー乗りになってしまう箇所はあるものの、大方結果オーライな内容。田舎者ならではの人肌感がアコースティックなモダン・ロックに無理なく溶け込んだ、見事な成功作といえる。彼等はシンプル・マインズにはならなかった。
2009年03月22日
Popium - Permanently High (2002)

2002年/国内盤/EGGING(解説:伊藤英嗣)
元ポゴ・ポップスのフロントマン、フランク・ハマースランドが本国ノルウェーはベルゲン出身の同郷キラ星ミュージシャン達と連れ立って結成した、ある意味局地的スーパースター・バンドともいえる5人組によるセカンド・アルバム。当時僕はかの国の「ベルゲン・ポップ・ウェイヴ」なる動向については全くのノーチェックで、だから最初家人からこのバンドの存在を知らされた時も純粋にフランクへの興味から彼等の音に接した訳だけど、所謂ポゴ節を色濃く残したデビュー盤の楽曲群には正直ホッと胸を撫で下ろす思いがしたのを覚えている。そこから間を置かずリリースされた本作(我が国内では同時リリース)も、前作がお披露目的な行儀の良さに落ち着いてしまったとの反省でもあったか、フォーク・ロックからサイケやパンクまで広範にフォローする胆力を一気に発揮してはいるものの、素地としてのグッド・メロディがちゃんと根元にあるので一安心。北欧的異国情緒に逃げる必要の一切無いワールドワイドなポップ基準を今回も楽々とクリアしている。ただ、わざわざキッスの初期曲をカヴァーしたM10には若干の苦笑い。
The Soup Dragons - Hotwired (1992)

1992年/国内盤/ポリドール(解説:宮子和眞)
ストーンズのカヴァー「アイム・フリー」のスマッシュ・ヒットで、ブーム便乗組の最たるものとしてリスナーに色眼鏡をかけさせた、当時の徒花最有力候補のひとつ。その音楽スタイルの無節操な変遷ぶりも相まって、ライナーにもある様に同じグラスゴー出身のプライマル・スクリームの後追いである点を散々指摘され、その都度ボビー・ギレスビーの株が上がっていった哀れなバンドでもある。僕自身も数年前日記か何かで前作『ラヴゴッド』に触れ、そのあまりの酷さに立腹してつらつらと文句を書き連ねた記憶がある。ただ、本盤はそれに続くアルバムとしてはそれ程悪い出来ではなく、むしろ僕の中では彼等に対する好感度が上がったほど。相変わらず弱いヴォーカル、借り物丸出しのリズム、どうにも拭い切れない偽物性と、普通のバンドなら致命的な要素を孕みつつ、実はしぶとくブギー・スタイルのロックンロールに拘るところなど、どっこいな本格志向を覗わせる。根無し草を座右の銘として世間に無理矢理認めさせたボビーとは対照的な、もたついた売らんかな精神が今更ながら面白く感じられる一枚だ。
2009年03月19日
Frank Black - S/T (1993)

1993年/国内盤/日本コロムビア(解説:小野島大)
頭髪がノーフューチャーでしかも今ならメタボのサンプルにうってつけの肥満体という、これ以上無いほど判り易いルックスのハンデをものともせず80年代後半のインディ・シーンを全速力(多分独りだけ俯き気味)で駆け抜けた偉大なバンド、ピクシーズのバンマスによる初のソロ・アルバム。最早修復不可能なバンド・メンバー間の軋轢(主にキム)をスッパリ忘れる意図もあってか、ここでは本名でなくフランク・ブラックなる名義を冠している(以降彼はずっとこの名前で活動を続ることになる)。元キャプテン・ビーフハートのエリック・ドリュー・フェルドマンとの共同プロデュースによる全15曲は、『ボサノヴァ』辺りから顕著になった彼のポップ志向がより押し進められた形で各楽曲に定着した、非常にヴァラエティに富む賑々しいラインナップに仕上がった。元来サーフ・ミュージックへの偏愛を公言していた彼らしく、ここではビーチ・ボーイズのカヴァーを嬉々として披露するなど、元バンドマンによるソロならではの解放感を十二分に満喫した模様。彼特有のファンタジックな歌詞世界も楽しい逸品だ。