2009年08月09日
Blind Melon - Soup (1995)

1995年/国内盤/東芝EMI(解説:田中宗一郎、有島博志)
グランジ/オルタナ旋風吹き荒れる当時のUSシーンにあって、ハード・ロックともヘヴィ・メタルともつかぬ微妙なサウンドを引っ提げてデビューした彼等の2作目にして最後のスタジオ・アルバムとなった本盤は、今改めて聴き返しても「もし2009年にシャノン・フーンが生きていたなら・・・」との叶わぬ空想を抱かせるだけのクオリティを誇る力作だ。南部の空気をたっぷりと吸い込んだ恰幅の良い音楽性に、同時代者としてのシリアスな精神性が輪郭を滲ませることなく刻まれた楽曲群は、未来のロック・スターを約束するスタート・ラインとして十分な輝きを湛えている。どうもこの頃個人的に雨後の竹よろしく現れては消えていく商業オルタナティヴ・バンドに食傷気味で、シュガーのセカンド以降からは全くといっていいほどUSのバンドに手をつけなかったのが災いしてか、彼等との出会いもシャノンが死んでしまってからだったのが悔やまれてならない。国は違えど例えば90年代のザ・バンドになっていた可能性すら感じさせる本作に接すると、その思いは強まるばかりだ。
The Dandys - Symphonic Screams (1998)

1998年/国内盤/発売:マーキュリーミュージックエンタテインメント 販売:ポリグラム(解説:井上貴子)
キンクスの「ダンディ」という曲からバンド名を拝借したという英国はリーズ出身の5人組によるデビュー・アルバム。一聴してまず思い浮かべるのはスウェードやパルプといった90年代型グラム・バンドだけど、それと同時にハイ・ラマズやディヴァイン・コメディ等のラグジャリー・ポップも脳裏を掠めたりする。いわば当時流行りのサウンドの美味しい所を手際良くパッケージングした格好のサンプル盤ともとれる一枚といえよう。ただ、全曲の作詞作曲を手掛けたVo.のアンドリュー君、ルックスが良くてビッグマウスで売ってるのは結構だが、そのあまりに素人臭い歌い方はどうにかならなかったのかね。バビロン・ズーにならんだけマシか?とかなり期待低めでプレイボタン押して、それでもM5、M6辺りで「おっ、おっ、こりゃイケルか!?」とか盛り上がったのも束の間後が続かず、再度ジョニー・マーばりのイントロでうひょーっと立ち上がったら歌い出しで一転ガックシ項垂れちゃったM9でアナタB級直行よ。大化けしそうな雰囲気は始終そこかしこで見当たるんだけどなあ。
Poster Children - Junior Citizen (1995)

1995年/国内盤/発売:WEA 販売:ワーナーミュージック・ジャパン(解説:保科好宏)
我が国には一文字違いで阿呆の様な売り上げを叩き出す超ビッグ・ネームのバンドがいるけれど、当然ながらこの人達はまったくの無関係。帯には戯れにポスチルなんて略称が印刷されてて、こういう遊び心はむしろマイナスの方向でしか作用しないぞ!と目にした時はレコード会社にクレームの電話でもよこそうかと思った(まだウチにPCなぞ無かった頃)。まあ正直ジャケット周りのアートワークとか見てもバンド名に関わらず何処か冗談めかしたというか、バンド稼業に本腰入れた連中とは思えない雰囲気がアリアリだったんで、一体どんなサウンドが飛び出して来るか当初かなり不安ではあった。それがアナタ、いざスピーカーから音が流れ出した瞬間、すべての懸念が雲散霧消したね。ああこれはちゃんとロックが好きでたまらない連中が作ったサウンドだわ、と。思えば87年の結成以来、初期のプロデュースをスティーヴ・アルビニに任せる等本国イリノイ州でシコシコと切磋琢磨して来ただけのことはある。素地の整ったポップ・パンクがズラリ11曲。でもやっぱデザイン最悪。
2009年08月05日
Muse - Absolution (2003)

2003年/国内盤/エイヴェックス(解説:坂本麻里子)
確かに良く出来ている。ただ少々出来過ぎかな?という気がしないでもない。古のプログレッシヴ・ロックを髣髴させる重厚でヴァラエティに富み、尚且つ高い構築美を誇る楽曲群といい、UKロックにおけるドラマツルギーの何たるかを知り尽くしたかのようなストーリーテリングといい、更には、ヴァースを追うごとに高みに上り詰めていくマシューの迫真の歌声といい、これがよもや3ピース・バンドの手で創られたものとは俄かに信じ難いほどのフィニッシュ感である。だが、作家サマセット・モームの名言「完璧には一つの重大な欠点がある。退屈になりがちなのだ。」に倣っていうと、ここにはリスナーが持てる想像力を総動員して作品世界の冒険を楽しむ為の端緒というものが決定的に不足している。あたかも「レディオヘッド以降」のサウンドを鋳型に流し込んでガッチガチに固めたかの如き完成度。没入感の乏しい事といったら無い。現行シーンにおける商品価値の高さは認めるが、個人的にはそれ以上の印象は抱けなかった。(小声で)100円で買ったからまあいいか。
2009年07月26日
Superdrag - Regretfully Yours (1996)

1996年/国内盤/WEAジャパン(解説:YOGGIE)
あのレイ・デイヴィス御大も認めたという(ホントか?)、米国はテネシー州ノックスヴィル出身の4人組パワー・ポップ・バンドによるデビュー・アルバム。胡散臭いバンド名や、これって精一杯気を利かせたつもりなんだろうなあ、とやれやれな気分になるジャケット周りのアートワーク等、音に接する前から色々と不安になる要素はあったものの、中身の方はちゃんと大丈夫だった。ヴェルヴェット・クラッシュやポウジーズ、ファウンティンズ・オブ・ウェイン辺りのサウンドが好みの人にはうってつけのメロディアスなギター・ロックがズラリ13曲。このクオリティなら数多の亜流に飲み込まれる心配も無かったろう。かったるいメロウな曲なぞ挿入せず、アルバム通じてスピード感を切らさなかったのも功を奏してか、実に爽快なリスニング体験が味わえる佳作に仕上がっている。それにしても、バンド名といい、ちょっと目を離すとグラマラスに傾きそうな曲作りといい、当時から彼等にはロック・スターへの妙な野心でもあったのだろうか。今でも現役で頑張ってるメンバー達に、個人的に一番問うてみたいのはその点だ。
The Bandits - And They Walked Away (2003)

2003年/国内盤/ワーナーミュージック・ジャパン(解説:松田建人)
当時の英リバプール・シーンを牽引した「バンドワゴン」なるイベントの主宰者という別の顔を持ち、かのオアシスのフェイヴァリットにも挙げられたこともある(実際本作のレコーディングはオアシス所有のスタジオで行われた)6人組による、満を持してのデビュー・アルバム。クラブ・ナイトを立ち上げて地元のムーヴメントを活性化させようとするその心意気に、僕は真っ先に90'sネオ・ヒッピーの代表格、サセックス州はブライトンが生んだ英雄ザ・レヴェラーズを思い出した。音楽的な共通項はそれほど見出せないものの、どちらもパンク・ムーヴメントがもたらした最大の成果たるD.I.Y.精神を尊重している点で、等しく称賛に値しよう。残念ながら現在は既に解散してしまっている彼等だが、ここに収録されたボートラ含めた全13編の楽曲には、リバプール出身組としての矜持が余すところ無く刻まれている。男気あるヴォーカルに黒っぽいフィーリングたっぷりなメロディ・ライン、骨太なリズム隊、微妙にサイケ色を滲ませたアレンジメンツ等々、輸入ルーツとしてのUSロックがしっかりと血肉化している。
2009年07月20日
The Orb - Bicycles & Tricycles (2003)

2003年/国内盤/V2レコーズ・ジャパン(解説:荏開津広)
僕が勝手に日本で5指に入る作詞家と認定しているムーンライダーズの鈴木慶一氏による、91年のソロ作『SUZUKI白書』収録の8曲目にアレックス・パターソンの名前を目にして「おやまあ。」とニンマリしてから、今年で早や18年。何だか眩暈を起こしそうなくらいの歳月が経ったんだなあ、と、03年の途中経過たる本作を聴きながらぼんやり考えた。あの当時はまだアレックス・パターソンという名前に只ならぬ期待感があって、先鋭的たろうとするアーティスト達はこぞって彼に白羽の矢を立てていた様な記憶があるけれど、流石にミレニアムを3年も過ぎた頃になると事情も変わって来たらしく、ここでのアレックスは何だかとってもニュートラルな感じ。ヒットしたM1なんてむしろ懐かしさすら感じるサウンドで、「おいおいこれで大丈夫なの?」と逆に心配になったほどだ。ただ、シーンのイノヴェイターの座をあっさり明け渡して、築き上げて来た己の音楽文体を改めて磨き直すかの様に進行する楽曲群に接していると、これってプリンスにとっての『グラフィティ・ブリッジ』的なポジションに位置するのかもなあ、と、これまたぼんやりと考えさせられたりもした。
The Thrills - Let's Bottle Bohemia (2004)

2004年/国内盤/東芝EMI(解説:伊藤英嗣)
こういうある種の多幸感を売りにするバンドにとっての最大のメリットは、オリジナリティに対する配慮がそれほど必要とされないことだろう。「何時か何処かで聴いたメロディ」が、パクリ云々の誹りよりむしろ、そのサウンドを徹底的に洗練させることで逆に高い評価へと繋がる要素と成り得る彼等にとって、作を重ねる毎に求められるのはただひとつ、リスナーを巻き込んでの没入感である。そこへいくとデビュー・アルバムの時点で「サンシャイン・ポップ」なる呼称を勝ち得た彼等は実に幸運だった。勿論、その運は彼等の実力がもたらした必然でもあったのだが、それにしても本作、まさかここまでのジャンプアップを果たすとは思いも寄らなかった。すわハード・ロックか!?と思わずジャケットを確認してしまいそうなギター・リフが鮮烈なM1から始まって、どれもリード・シンガーのコナーの声質を知り尽くした楽曲で埋め尽くされているのには恐れ入る。例えばPCでニュースをチェックしつつの“ながら聴き”のシチュエーションで、そういや今流してるのはどのロック・クラシックだっけか?との錯覚を呼び起こす点で、彼等の勝利は確定している。
2009年07月12日
The Jazz Butcher - Fishcotheque (1988)

1988年/国内盤/ビクター音楽産業(解説:大鷹俊一)
恥ずかしながら彼等との出会いは本作がお初だったので、往年のファンの方々には悪いが個人的にザ・ジャズ・ブッチャーといえばこの一枚!となる。確かまだこの頃はパット・フィッシュの本名を表沙汰にせず、あくまでジャズ・ブッチャーなるペルソナを気取ったフロントマンが主宰する半ソロ・プロジェクト的な色合いが濃かったような記憶があるけれど、音の方はしっかりとコミュニケートの行き届いたバンド・サウンド。結構な著名人入り乱れての数回にわたるメンバー・チェンジにも動じず、当時のクリエイションが醸していたレーベル・カラーにお誂えな、軽妙洒脱で親密感のあるギター・ポップが最後まで楽しめる。マーヴィン・ゲイの有名曲をパロディ気味にフィーチャーしたM3や、いつもの飄々とした佇まいから一転してシリアスな調子で迫るM8など、どれも甲乙つけ難い佳曲が並んでいて、僕は今でもたまに引っぱり出して聴いている。パットの声質からして、ブルー・エアロプレインズのジェラルドが歌うことを覚えてたらきっとそっくりな音楽性になってたんじゃないか、とか邪推させられるのはご愛嬌。
Elbow - Asleep In The Back (2001)

2001年/国内盤/V2レコーズ・ジャパン(解説:小杉俊介)
このデビュー・アルバムを出すまでに既に結成してから10年近く経っていたというのも素直に頷ける、新人としては異例なほど気品と風格とに満ち溢れた一枚だ。ロックに気品、というのもおかしな話だけど、例えば往年の良質なプログレ・バンド達による「毒食わば皿まで」的なサウンド及び精神性の突き詰め感がビシビシ伝わって来る点において、本作は「ロックンロール!!」とのシャウトから最も遠い場所に位置するシリアスな作品といえる。何より象徴的なのが、どこか要領を得ないようでいてそのくせ最後まで集中力を切らさないガイ・ガーヴェイによる、掠れ気味のハイトーン・ボイスだ。嗚咽でも慟哭でもなく、沈思黙考の寸前で日常のルーティーンにかろうじて押し留まっているかのような彼の歌声は、ミディアム~スロー・テンポ中心の楽曲構成にあっても最後までリスナーを飽きさせない大きな要因となっている。何はともあれ、ポスト・ロック的な実験性と、トラディショナルな歌心とが最良の形で止揚の場を得た傑作。マンチェスター出身組もえらい様変わりしたものだ。